教会ニュース巻頭言
〜教会ニュース発行時、更新予定〜
■ 網膜に刻みつけたいこと |
2005年05月22日(日) |
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金 子 神 父 眼の病気をずっとかかえこんだ私ですから眼の話しをします。 少女は空腹のお姉さんに、二枚のスルメをあげようと雪の夜道を歩いていたが、途中でなくしてしまった。ぼんやり空を見上げると、雪片が百万の蛍のように舞いおちていた。そうだ、この雪景色をお姉さんに持っていこうと少女は考えた。お兄さんからこんな話しを聞いたのを思い出したから。 デンマークの医者が、難破した若い水夫の死体を解剖しその眼球を顕微鏡で見たところ、網膜に美しい一家団欒の光景が写っていた。医者は友人の小説家にこの話しをしたところ、彼は医者に言った。 若い水夫は荒波にもまれ、岩にたたきつけられ、夢中にしがみついたところは燈台の窓だった。 助けてくれと叫ぼうとしたとき、今しも燈台守りの一家が楽しい夕食を始めようとしていた。 あヽ、いけない。今、助けてくれと叫んだら、一家の楽しみはめちゃくちゃこわれる。すると、窓にしがみついた指の力がすっとぬけ、大波が水夫の体を沖へ運んでしまった。 「この水夫は世の中で一番優しく気高い心の人だった。」 小説家の話しに医者も感動して二人でこの水夫の遺体をねんごろに葬った。 さて、少女は網膜にしっかりと「雪景色、舞いおちる天の水晶のかけら」と念じながら自分の家へ帰った。「すべての気高いこと、すべての清いこと、すべての愛すべきこと、すべての真実なこと、それを心に留めなさい」とフィリッピの教会への手紙の中でパウロがすすめているように、私の魂が永久に消えない美しいものをいつも探し歩きますように。
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